「ゆめみるケモノ」

ちょっと不思議なお話や、お菓子にまつわるショートストーリーを掲載します。

2008-08

夏休みのおわり

更新とまりがちですが、なんとか立て直します。

20070831182745.jpg

スケッチブックのクロッキーのような文章もアップしてみます。

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ナツヤスミノオワリ


 除虫菊の畑には虫は居ないのかな。

 少し前から、いい感じだなあと思っていた同級生の女の子にそう訊ねられて、息子は旅に出る決心をした。
 自分の目で除虫菊の畑を見に行くのだそうだ。
 高校生になった息子がそんな風に考えるようになったのは、別れた女房がよほど素晴らしい育て方をしているのだと思った。

「どうやって行くんだ」と質問すると、原付きバイクの免許をとって、友達からポンコツのカブを譲って貰うのだと言う。
「へえ、カブか。あれはいいバイクだよな」
 乗らなくなって二十年も経つのに、ふとあの、単車の匂いが鼻の奥に蘇って来た。

 鉄とゴムとプラスティックにオイルとガソリン、そして電装品のちりちりと乾いた臭気が入り混じった、並の機械にはない甘く複雑な匂い。カレージに置かれている時、風を切って走っている時、そして出かけた先で、エンジンのスイッチを切って休む時。それぞれの時にその香りは生き物のように変化して……

 ポンコツのバイクにでもワックスをかけるの好きだった。
 でもそれは、完成されたバイクの匂いに重なる癖の強い強烈な匂い。
 だから仲間うちでは僕のバイクは臭くて有名だった。

 息子も出かける前に、そのポンコツカブにワックスをかけたりするのだろうか……

「整備をやってやりたいけど、多分無理だから、ちゃんとバイク屋で見てもらえよ。その時にはバイク屋のおやじの横に付いていて、点検手順をちゃんと見ておくといい。それが何かと役に立つんだ」
 飛ばすんじゃないぞと言っても、結局自分で痛い目に遭うまで、スロットルはいつも全開で最高速度で走るのだろう。

 どうか、ただの一度の失敗で未来を失う、そんな事の無いように。

 もっと話を沢山したいとは思うものの、つまらないどうでもいい質問ばかりをしてしまい、二人で居ると手持ち無沙汰で困った。
 ほとんどの時間、息子はビデオゲームをして、僕はその横で猫と犬を撫でながら過ごした。

 帰り際、僕は言った。
「友達のところから、どんなポンコツがやって来ても、ワックスをかけてやれば結構ラッキーなんだよ」
 息子は言葉の意味を計りかねたのか少し黙って、そしてにこりと笑った。

「それってジンクス」
「まあな」

 自分のバイクが旅先で何をもたらしてくれるか、それは偏に運にかかっている。
 だけどそれは、いい歳になってから分かればいい事だ。


 夏休みはもうすぐ終わる。
 そして彼の人生が間もなく始まる。

 ………………


コメント

こんにちは☆
原付バイクの匂いに焦点を当てたところが面白いですね。
わたしたちはつい視覚に頼りがちだけど、他の五感もフルに使って生きれば人生ってもっと色んな見方や思い出ができるのかもしれませんね。感性のスロットルは常に全開でありたいものです(笑)。

こんにちは渋谷ナオさん。

立て直すとか言ってまったく立て直しにしくじっていいる北崎です。
お話はそれなりに書いているのですが、何かぴりっとしません。

これは「こうだったらいいな」という願望のような書き物で、小説とか作品と呼ぶような部類のものではないかも知れないです。
犬が匂いでものを見ている感じが好きで、匂いのことを書くときはけっこう楽しめます。

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長く続けて行くというのは決めているんですが、どれくらいの方に読んでいただけているのかと思うと、とにかく寂しいです。
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