旅人
今日は短いお話です。

少女の年頃をイメージしてもらえるかどうか……
「続きを読む」でお話を読んでください。
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タビビト
遠い国から来た旅人に島の娘が尋ねました。
「あなたの国はどんな国」
旅人は笑って応えました。
「僕の国はここより余程に寒くてねえ、真っ白の熊がいる」
娘は島の中央の山にいる、マレー熊を思い浮かべました。
「熊は少し恐いよね」
「ああそうだよ、白い熊はものすごく体が大きくて獰猛だ。家畜の羊も、まとめて3匹も食べられたりする」
それは本当に恐い熊だと娘は思いました。
島の熊は滅多に家畜を襲ったりしませんし、犬を見ただけでも逃げ出します。
娘は熊の事を聞いただけで旅人から離れて行きました。
遠い国の話を聞きたがっていた子供が他にも大勢居たからです。
しばらく島に留まって、露天掘りの鉱山を視察していた旅人でしたが、やがて仕事を終えて帰る事となりました。
船着き場まで見送りに行った沢山の子供達の中に、娘の姿を見つけた旅人は、娘に近付いて言いました。
「ひとつ言い忘れていた。僕の国に居るその白い熊はね、泳ぎもとても上手なんだよ」
やがて村の桟橋に横付けされたエンジン付きの艀に旅人が乗ると、すぐさま舟は波を蹴立てて、沖合の大きな客船へと走り去って行きました。
その翌日から毎日、娘は夕方になると浜に出て、じっと沖を見つめるようになりました。
「恐い北の国の熊が、いつか泳いで来るかも知れないからね」
何をしているかと訊ねる子供達にそう言って、娘は何も聞くことが出来なかった、北の国での旅人の暮らしぶりを、空想しては胸に描いておりました。
そしてひと月ほどが過ぎた頃。
娘は生まれてはじめて、ため息というものを吐きました。
………………

少女の年頃をイメージしてもらえるかどうか……
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遠い国から来た旅人に島の娘が尋ねました。
「あなたの国はどんな国」
旅人は笑って応えました。
「僕の国はここより余程に寒くてねえ、真っ白の熊がいる」
娘は島の中央の山にいる、マレー熊を思い浮かべました。
「熊は少し恐いよね」
「ああそうだよ、白い熊はものすごく体が大きくて獰猛だ。家畜の羊も、まとめて3匹も食べられたりする」
それは本当に恐い熊だと娘は思いました。
島の熊は滅多に家畜を襲ったりしませんし、犬を見ただけでも逃げ出します。
娘は熊の事を聞いただけで旅人から離れて行きました。
遠い国の話を聞きたがっていた子供が他にも大勢居たからです。
しばらく島に留まって、露天掘りの鉱山を視察していた旅人でしたが、やがて仕事を終えて帰る事となりました。
船着き場まで見送りに行った沢山の子供達の中に、娘の姿を見つけた旅人は、娘に近付いて言いました。
「ひとつ言い忘れていた。僕の国に居るその白い熊はね、泳ぎもとても上手なんだよ」
やがて村の桟橋に横付けされたエンジン付きの艀に旅人が乗ると、すぐさま舟は波を蹴立てて、沖合の大きな客船へと走り去って行きました。
その翌日から毎日、娘は夕方になると浜に出て、じっと沖を見つめるようになりました。
「恐い北の国の熊が、いつか泳いで来るかも知れないからね」
何をしているかと訊ねる子供達にそう言って、娘は何も聞くことが出来なかった、北の国での旅人の暮らしぶりを、空想しては胸に描いておりました。
そしてひと月ほどが過ぎた頃。
娘は生まれてはじめて、ため息というものを吐きました。
………………
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