「ゆめみるケモノ」

ちょっと不思議なお話や、お菓子にまつわるショートストーリーを掲載します。

2008-08

旅人

今日は短いお話です。

20070809173546.jpg

少女の年頃をイメージしてもらえるかどうか……

「続きを読む」でお話を読んでください。
作品一覧はじめての方へ


タビビト


 遠い国から来た旅人に島の娘が尋ねました。
「あなたの国はどんな国」
 旅人は笑って応えました。
「僕の国はここより余程に寒くてねえ、真っ白の熊がいる」
 娘は島の中央の山にいる、マレー熊を思い浮かべました。
「熊は少し恐いよね」
「ああそうだよ、白い熊はものすごく体が大きくて獰猛だ。家畜の羊も、まとめて3匹も食べられたりする」
 それは本当に恐い熊だと娘は思いました。
 島の熊は滅多に家畜を襲ったりしませんし、犬を見ただけでも逃げ出します。

 娘は熊の事を聞いただけで旅人から離れて行きました。
 遠い国の話を聞きたがっていた子供が他にも大勢居たからです。


 しばらく島に留まって、露天掘りの鉱山を視察していた旅人でしたが、やがて仕事を終えて帰る事となりました。

 船着き場まで見送りに行った沢山の子供達の中に、娘の姿を見つけた旅人は、娘に近付いて言いました。
「ひとつ言い忘れていた。僕の国に居るその白い熊はね、泳ぎもとても上手なんだよ」

 やがて村の桟橋に横付けされたエンジン付きの艀に旅人が乗ると、すぐさま舟は波を蹴立てて、沖合の大きな客船へと走り去って行きました。


 その翌日から毎日、娘は夕方になると浜に出て、じっと沖を見つめるようになりました。

「恐い北の国の熊が、いつか泳いで来るかも知れないからね」

 何をしているかと訊ねる子供達にそう言って、娘は何も聞くことが出来なかった、北の国での旅人の暮らしぶりを、空想しては胸に描いておりました。

 そしてひと月ほどが過ぎた頃。
 娘は生まれてはじめて、ため息というものを吐きました。

………………


コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://kitazakisirohiko.blog103.fc2.com/tb.php/77-931155c5
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

 | HOME | 
ホームページ アフィリエイト レンタルサーバー FC2ブログ 専門学校

 

プロフィール

北崎白彦

Author:北崎白彦
長く続けて行くというのは決めているんですが、どれくらいの方に読んでいただけているのかと思うと、とにかく寂しいです。
コメントご感想頂けるとたいへん嬉しいです。

祝祭日はお休みいたします。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ